低トランス酸型ハードバター「ファシルシリーズ」

ハードな噛みだしでシャープな口溶け感を有するハードバターです。

チョコレートの原料油脂であるカカオバターは、特徴のある脂肪酸組成を持ち、融点が34~36℃の油脂です。チョコレートは、室温で固まっていて、食べたときに口の中でさっと溶けます。カカオバターはすぐれた風味を持つ高価な油脂ですが、このカカオバターに似た特長をもつ油脂がハードバターです。体温に近い融点を持ち、口のなかでさっと溶ける油脂です。ハードバターは、洋菓子のコーティングやチョコレート、ソフトキャンディー、チョコレートクリームなどに使われています。

ハードバターは、液体の植物油を原料にし、水素を反応させて部分硬化した油脂が使われていました。リノール酸やリノレイン酸などの2個以上ある不飽和結合に水素を反応させ、1個以下の不飽和結合を持つようにして融点を高くします。この反応ではシス型からトランス型への幾何異性化反応も生じます。つまり、リノール酸やリノレイン酸からオレイン酸やエライジン酸(オレイン酸のトランス型異性体)へと反応が進みます。エライジン酸を含む油脂はハードでシャープな融解性を持ち、ハードバターに最適な油脂といえます。

ところが、最近になってトランス酸の摂取量が増えると健康へのリスクを高めるという懸念が高まっています。この懸念を払拭するため、「ファシル」シリーズでは、トランス酸を発生させる部分硬化を行わずに、ハードな噛みだし感とシャープな口溶け感を独自の技術で実現しました。

「ファシル」の特長

図1 各種油脂類の固体脂含量

「ファシル」シリーズにはコーティングクリーム用の「ファシル」とサンドクリーム用の「ファシルSK」があります。どちらの製品も、トランス酸を含有する部分硬化油を使用していない、低トランス酸タイプのショートニングです。ハードな噛みだしとシャープな口どけ感とを、特殊な油脂加工技術を用いて、中鎖脂肪酸を油脂に導入することで実現したハードバタータイプのショートニングです。従来品ベース油における固体脂含量は、20℃付近においてほぼ50%であり、35℃においては5%以下と体温で融けて液体となります(図1)。このような融解特性により、ハード感とシャープな口どけ感が得られます(図2、3)。また、「ファシル」ベース油も各温度においてほぼ同じ固体脂含量を有します。従来品で高かったトランス酸型油脂の含有率は1.5%に抑えられています。

図2 従来品ベース油の融解特性(DSC 2℃/min昇温)
図3 「ファシル」ベース油の融解特性(DSC 2℃/min昇温)

なお、「ファシル」シリーズは、以下のすぐれた特長を有しています。

  • テンパリング(結晶調製)は不要です。
  • シャープな口溶け感を持っています。
  • コーティングクリームとしてもすぐれた作業性と艶のある製品が得られます。
  • ホイップ性と高吸水性、シャープな口溶けのクリームが得られます。
  • あらゆる洋菓子やベーカリークリームに安心して使用できます。

「ファシル」の用途例

トランス酸の含有量が少ないハードバター「ファシル」シリーズは、洋菓子のコーティングクリームやサンドクリームに使用できます。各製品について主な用途を以下に示します。

製品名 主な用途
ファシル シリーズ コーティングチョコレート、チョコレート、ソフトキャンディー
ファシル SK シリーズ 半生ケーキクリーム、チョコレートクリーム

なお、日本においては夏期と冬期では大きな気温の差がありますので、作業性や油脂の特性を保持するため、融点の異なる製品を使用するのが一般的です。「ファシル」シリーズにも、季節に適した製品(融点の異なる製品)を取りそろえております。コーティングクリーム用のファシルには、(H、M、L)の3タイプがあり、サンドクリーム用の「ファシル SK」には、(H、M)の2タイプがあります(表1)。

花王では、「ファシル」シリーズをお使いいただく上で、豊富でさまざまな技術的知見を持っています。また、このほかにも製菓用起泡性油脂「ロフティ」、「ハイロフティ」「インパルス」をはじめとして、さまざまな食用油脂製品や食品添加物製品を取り扱っておりますので、何なりとご相談をお寄せいただきたいと思います。

[表1 「ファシル」製品一覧]
区分 製品名 融点(℃) 荷 姿
コーティングクリーム用 ファシル(H) 40 ローリー15kg箱
ファシル(M) 38 ローリー15kg箱
ファシル(L) 36 ローリー15kg箱
サンドクリーム用 ファシルSK(H) 39 ローリー15kg箱
ファシルSK(M) 36 ローリー15kg箱
  • ※この記事は、花王ケミカルだより59号(2007年11月)から抜粋したものです。

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