高機能特殊増粘剤「ビスコトップ」

すぐれた増粘性を有し、さまざまな用途に使えます。

日本は、周囲を海に囲まれ水資源に恵まれた美しい国土を有しています。知床半島や熊野古道をはじめとして、美しい山や海が数多くあります。このような観光名所でなくても、全国各地で高層ビルや高速道路の建設、トンネル工事、海岸線における護岸工事、港湾の建設などさまざまな工事が行われています。

河川や海岸などの水辺で行われる工事では、環境や水質を汚さないように、水質汚濁を防止するための対策も必要となります。長大な橋や海峡に建設されるつり橋などの橋脚工事では、河川や海の中に橋脚を構築します。これにはコンクリートが水中に拡がったり流されたりしないよう、粘性が高く水に分散しない水中コンクリートが使用されることもあります。また、地下水脈の付近で行う工事では、地下水の水質汚濁を防ぐ配慮も必要となります。このような、水に関わる環境では、コンクリートに増粘剤を添加して、水不分離性を付与します。一般には、水に溶けるセルロース系高分子などが使われますが、高機能特殊増粘剤「ビスコトップ」を使用しますと、従来品にないすぐれた高粘性コンクリートが得られます。高機能特殊増粘剤「ビスコトップ」について、その特長や応用例についてお話しします。

「ビスコトップ」の特長

図1 「ビスコトップ」の増粘効果
写真1 水中での飛散抵抗性

「ビスコトップ」はA剤とB剤からなり、この両者が水中で静電的かつ疎水的な相互作用により結合することで、疑似ポリマー(チューブ状ミセル)を形成します。この配向した疑似ポリマーは、粒子に吸着することなしに水の粘弾性を制御するため、モルタルやセメントのレオロジー特性(粘性、流動性、粘弾性など)を自由に制御できる新しいタイプのレオロジー改質剤です。

「ビスコトップ」の特長を以下にあげます。

  1. 増粘性を付与できる。
    「ビスコトップ」の添加量を変えることで、弾性体から粘性体までの性状を制御できる。
  2. 水中での飛散抵抗性と充填性にすぐれる。
    「ビスコトップ」を添加したセメントスラリー は、水中への注入時にセメント粒子の飛散がほとんど無く、また、高い充填性を示す。
  3. 材料分離性にすぐれる。
    材料分離抵抗性が高いことでブリージングがほとんど無く、均質な超低強度、超軽量、および高吸水性セメント硬化体が製造可能になる。
  4. 水硬性物質の硬化物性にすぐれる。
    「ビスコトップ」添加系は、メチルセルロース系増粘剤添加系のような凝結遅延がほとんどない。
  5. 硬化体の吸水性にすぐれる。
    水/セメント比100~600%の硬化体は、低密度で高い吸水性を有する(表2)。

なお、「ビスコトップ」は、A剤とB剤との静電気力により配向して、形成された疑似ポリマーであるため、可逆性のあるチキソトロピー性を示し、しかも、せん断抵抗性が高いなどの特長も有しています。また、保水性とレベリング性にすぐれており、セメントやモルタル(セメントと砂、水の混合物)のひび割れを防止し、高い流動性を示すことにより充填性にもすぐれています。

「ビスコトップ」の応用例

写真2 杭の施工状況
写真3 高い透明度を維持できました

建築物などを建設する際に、基礎としてコンクリート杭を設置しています。今では、コンクリート杭は地中に打ち込むのではなく、掘削機で杭の長さの深い穴を掘り、この穴にコンクリート杭を挿入しています。コンクリート杭と穴との空間には、杭を固定するためにセメントスラリーを注入し、コンクリートで硬めます。

ここで、工事現場が砂地や礫の堆積層などで構成される軟弱地盤であったりしますと、セメントスラリーを注入しても穴の周囲に浸透(逸水)してしまいます。地下水脈の近くや浜辺などであれば、水質汚濁なども発生する恐れがあります。このような状況の工事で、ビスコトップにより増粘したセメントスラリーを使用しますと、逸水をほとんど起こすことなく施工できます。また、軟弱地盤では掘削孔の壁が崩れてせっかく掘った穴が埋まってしまうこともありますが、ビスコトップを使用すれば掘削孔の崩壊防止にも著しい効果を発揮します。

写真4 砂質土への逸水モデル試験と施工例

土木・建築工事では、建物の床にコンクリートを打設しますが、床下地材としてモルタルなどが使われます。一般に、モルタルはコンクリート表面に薄く拡げられます。乾燥が早いので水分が不足しないよう、表面をシートで覆うなどの養生が必要となります。「ビスコトップ」をセルフレベリング材として床下地材に添加しますと、セルフレベリング性とともに流動性の高いモルタルが得られます。セルフレベリング性が高いということは、施工に際してモルタルを拡げて塗布する作業を軽減できることになります。しかも、「ビスコトップ」の添加により保水性が高くなりますので、モルタルの乾燥を抑制して、初期乾燥ひび割れを防止します。これは、コンクリートが硬化するのに必要な水分を保持することで、乾燥による水分不足から発生するひび割れを防止できるからです。

写真5 セルフレベリング性とひび割れ防止性

このほかにも、「ビスコトップ」で増粘したコンクリートは、可逆性のあるチキソトロピー性を有するため、コンクリート打設現場まで高圧ポンプで輸送することもできます。すなわち、高い粘性を持つにもかかわらず、高い流動性や充填性、レベリング性を併せて持つ、今までにないコンクリート用増粘剤です。今後も、すぐれた機能を有する製品を開発してまいりますので、ぜひ花王の建築・土木用薬剤をよろしくお願いします。

[表1 製品一覧]
品名 内容組成 外観 pH 密度 使用量
(セメント%)
ビスコトップ 100A アルキルアリルスルフォン酸塩 無色液体 8~10 1.065~1.105 0.5~5.0
ビスコトップ 100B アルキルアンモニウム塩 無色液体 4~8 0.950~0.990 0.5~5.0
[表2 水/セメントによる吸水性低密度コンクリート]
W/C(%) 密度(g/cm³) 吸水率(%)
100 0.85 68.0
200 0.50 137.0
300 0.39 205.0
600 0.26 270.0
  • 注)硬化体密度は105℃で乾燥後、吸水率は水中に30分間浸漬後に測定。
  • ※この記事は、花王ケミカルだより57号(2006年5月)から抜粋したものです。

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