乳化重合用反応性界面活性剤「ラテムル PD-104」

すぐれたポリマー物性のソープフリーエマルションが得られます。

営業担当が対話形式で、製品をご紹介します。

  • ※現在、営業担当が代わっていることがあります。ご了承ください。

プラスチックの分野で

—さまざまな界面活性剤製品を取りそろえられておられますね。

上田:ええ、花王は、界面活性剤の特長ある乳化や分散、凝集、浸透、潤滑、可溶化、起泡、消泡、帯電防止、殺菌、消毒などの機能を利用して、さまざまなプラスチック製品の製造場面で使われております。また、界面活性剤製品だけでなく高級アルコールや脂肪酸、脂肪エステル製品なども、プラスチック分野で使われております。

吉川:これらの製品には、プラスチック成形加工用添加剤や重合用薬剤などがあります。このうち、重合用薬剤では乳化重合用乳化剤や安定剤、調整剤などの製品郡があります。また、成形加工用添加剤では可塑剤や滑剤、帯電防止剤、防曇剤などといった製品群があります。

—実に、多くの製品がありますね。重合用薬剤では、乳化重合用乳化剤が主な界面活性剤製品といえるでしょうか。

上田:そういえますね。プラスチックには、モノマーとよばれる分子量の小さな物質を原料にして、重合反応などによりモノマー分子が結合して高分子量化することで、さまざまな種類のプラスチックがつくられます。重合反応の中で縮合反応は、それぞれの分子の一部が、水やメタノールなどといった簡単な構造の分子としてはずれて結合する反応をいいます。
また、付加重合反応は、不飽和結合をもつモノマー(酢酸ビニルなどのビニル化合物)分子同士がラジカル連鎖反応などで結合することで、高分子量化反応が進むものです。付加重合反応には、重合反応が進行する状態(固体や溶液、乳化状態など)により、

  • 塊状重合
  • 溶液重合
  • 懸濁重合
  • 乳化重合など

に分類されます。この中で乳化重合とは、界面活性剤により水などの溶媒中で可溶化・乳化したモノマーを重合させるものです。重合反応に水や溶剤を使用するのは、溶媒を加熱・還流することで、反応温度を一定にコントロールできるからです。

吉川:乳化重合反応では、界面活性剤のミセル中に可溶化されたモノマー同士が付加することで重合反応が開始されます。重合反応が進み、ミセル中のモノマー分子が消費されると、新たに油滴状に分散しているモノマー液からモノマー分子が補給され、重合反応が進みポリマー粒子を生成します。反応がさらに進みますと、界面活性剤ミセルは消失して新たなポリマー粒子が生成しなくなり、生成したポリマー粒子がさらに大きく成長します。モノマー液滴が消失し、ポリマー粒子内に残存するモノマー分子が重合してしまいますと、重合反応は完結します。このようにして、多数のポリマー粒子が分散したエマルションとか、ラテックスといわれるものができあがります。

—乳化重合で使用される界面活性剤製品には、どのような製品群がありますか。

豊富な界面活性剤製品群

上田:乳化重合用乳化剤には大きく分けて陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とがあります。陰イオン性界面活性剤としては、石けん系界面活性剤の「KS ソープ、NSソープ、OSソープ」があり、硫酸エステル系界面活性剤の「エマール」・「ペレックス」・「レベノール」・「ラテムル」シリーズ、非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレン誘導体の「エマルゲン」シリーズなどの製品群を取りそろえております。

—乳化重合での乳化剤の働きは、乳化・可溶化とポリマー粒子の分散・安定化ということになりますね。

吉川:ええ。従来、乳化重合用乳化剤としては、アルキルフェノール誘導体の硫酸エステル塩が使われていましたが、環境への影響が少ない界面活性剤が求められていました。この要望については、エーテルサルフェート型陰イオン性界面活性剤「ラテムルE -118B」とエトキシレート型非イオン性界面活性剤「エマルゲン1100」シリーズなどを新たに開発してきています。

上田:このうち、「ラテムルE -118B」は、重合安定性と機械的安定性にすぐれ、重合後のエマルションの粘度がひくく、取扱が容易、生分解性が良好で、環境にもやさしいなど、すぐれた特長を有する乳化重合用乳化剤です。また、「エマルゲン1100」シリーズについては使いやすいよう溶液状の製品としており、「ラテムルE -118B」ともどもすぐれた乳化特性を有しています。

吉川:これらの乳化剤は、重合反応後にもエマルション中に含まれていることになり、このことに起因して、エマルションを乾燥して得られるフィルムに強度や耐水性などのポリマー物性の低下が避けられないことになります。ポリマー物性の低下を防ぐ目的で新しく開発されたのが、分子内にモノマーと付加反応できる官能基を有する反応性界面活性剤「ラテムルPD-104」です。

—では、新しく開発された反応性界面活性剤「ラテムルPD-104」はどのような製品なのですか。

「ラテムル PD-104」の特長

上田:反応性界面活性剤「ラテムル PD-104」を用いますと、重合前は界面活性剤としてモノマー分子を可溶化・乳化する作用が発揮されます。しかも、重合反応においては反応中の分子と付加反応することで、ポリマー粒子に組み込まれます。そのため、重合反応後のエマルション中には界面活性剤分子は存在せず、いわゆる“ソープフリー”の状態が実現されます。もちろん、エマルションを乾燥して得られるフィルムでは、強度や耐水性などのポリマー物性が低下することもありません(耐水白化性については、図1参照)。

吉川:「ラテムル PD-104」は、一例を示しますと、アクリル酸ブチル(BA)/メタクリル酸メチル(MMA)共重合ポリマーなどのアクリル酸エステル系または、アクリル酸エステル・スチレン系共重合ポリマーにおいて、市販品A(アルキルフェノール系反応性界面活性剤)と比較しても、重合安定性や機械的安定性などの重合性能について同等の性能を有しています(表1参照)。また、乳化重合で得られたエマルションについても、そのポリマー物性である耐水白化性を図1、2に示しましたが、すぐれた製品であることがおわかりいただけるかと思います。

図1 乳化重合ポリマーの耐水白化性(ヘイズ%)
図2 乳化重合ポリマーの耐水白化性(ヘイズ%)
耐水白化性評価法
1.アクリル板(厚さ2mm)に、エマルションをアプリケーターで塗工
2.熱風乾燥機で乾燥(100℃/10min、乾燥膜厚100μm)
4.水道水に、60℃、16時間浸漬
5.水道水で冷却し、塗工板を水から取り出して余分の水分をふき取った後、すぐにヘイズメーターで測定(ヘイズ%)

—おっしゃるとおりですね。

上田:ええ。「ラテムル PD-104」のほかに反応性非イオン性界面活性剤「ラテムル PD-420、PD-430」なども新しく開発しております。花王では、乳化重合に関する豊富な知見もっていますので、どのようなことでもご相談をお寄せいただきたいと思います。

[表1 各種モノマー組成に対する「ラテムル PD-104」の重合性能]
モノマー組成※1 重合条件 評価項目 ラテムルPD-104 市販品(APE系)
BA/MMA=50/50
(アクリル酸1.5%)
界面活性剤:3%
初期エマルション
仕込み5%
重合安定性(%) 0.05 0.04
機械的安定性(%) 0.015 0.016
平均粒径(nm) 136 129
粘度※2(mPa・s、60rpm) 278 366
St/BA=50/50
(アクリル酸2.5%)
界面活性剤:3%
初期エマルション
仕込み5%
重合安定性(%) 0.04 0.03
機械的安定性(%) 0.012 0.014
平均粒径(nm) 117 110
粘度※2(mPa・s、60rpm) 133 83
2-EHA/BA=50/50
(アクリル酸1.5%)
界面活性剤:3%
初期エマルション
仕込み5%
重合安定性(%) 0.03 0.04
機械的安定性(%) 0.28 0.89
平均粒径(nm) 140 121
粘度※2(mPa・s、60rpm) 435 630
2-EHA/BA=50/50
(アクリル酸1.5%)
界面活性剤:3%
初期エマルション
仕込み5%
重合安定性(%) 0.09 0.07
機械的安定性(%) 0.36 1.00
平均粒径(nm) 152 134
粘度※2(mPa・s、60rpm) 240 608
  • ※1 St:スチレン、MMA:メタクリル酸メチル、BA:アクリル酸ブチル、2-EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル。
  • ※2 ポリマーエマルションの固形分はすべて45%に調整。
重合性能の評価法例
  • ※この記事は、花王ケミカルだより53号(2004年4月)から抜粋したものです。
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