使用ニーズにきめ細やかに対応する剥離技術
半導体パッケージ、パッケージ基板、プリント配線板の製造工程においては、一般的にフォトリソグラフィによる金属配線・接合のパターン形成が行われています。中でもドライフィルムレジスト(以下、ドライフィルム)を用いる事によるコスト・量産性に優れた製造工程が従来より適用されています。
ドライフィルムによるパターン形成を行った後にはドライフィルムの剥離除去が必要であり、古くからNaOH(苛性ソーダ)による剥離が適用されてきました。近年ではSAP/MSAP等のアディティブ系パターン形成用途を中心に、剥離性能の高いアミン系剥離剤も広く使用されるようになってきています。
AIや5G等の新技術に代表される電子機器の高機能化に伴い、機器内部の基幹部品である半導体パッケージ、パッケージ基板、プリント基板の高性能化・小型化はますます重要となってきています。高性能・小型化を達成するためには加工寸法の微細化が必要であり、より高解像なドライフィルムが継続的に開発されています。
高解像のドライフィルムは一般的に高密着・高架橋であるために剥離が難しく、従来の剥離プロセスでは対応できないケースもあり、より剥離性能の高いドライフィルム剥離剤が必要とされてきています。また、ドライフィルムにより形成される対象も従来は銅配線(Cu配線)が主流でしたが、近年提唱されてきている半導体パッケージの複合化、多次元化(>2Dパッケージ)に伴い、銅ピラー/ポスト(Cu pillar/Cu post)や、半田バンプ(Sn bump)の形成にも適用されるケースが増えています。
このような対象において剥離性能は高いものが求められる一方で、多種多様な材料・部材への腐食やダメージ性は低減する必要性が生じるため、より精緻なドライフィルム剥離剤の設計が求められています。
また、環境面から見ると高性能のドライフィルム剥離剤の主流となったアミン系剥離剤は多量の窒素分を含有している事から廃液・排水負荷が大きい事が挙げられます。
更に、アミン系剥離剤は毒性が強く、作業環境としても安全性に十分配慮される必要性があります。これらの状況より、非アミン系剥離剤の開発も望まれています。
花王では界面制御技術を基盤としたドライフィルム剥離剤の開発展開を行っており、今後ますますの情報化社会・環境保全に貢献していきます。
ドライフィルムを使用した工法による電子回路形成工程
製品紹介
高速剥離型ドライフィルム剥離剤
クリンスルー A-06
一般的な剥離剤であるNaOH(苛性ソーダ)に対してはもちろんのこと、市販のアミン系剥離剤と比較しても高速剥離が可能なドライフィルム剥離剤です。洗浄ラインの能力アップや新規設備投資削減に寄与します。
高解像度ドライフィルム対応剥離剤
クリンスルー A-06AP
高解像度で剥離が難しいドライフィルムや高アスペクトパターン等、一般的なアミン系剥離剤でも剥離が困難なケースにおいても、剥離性の改善が期待できます。
Sn bump形成用ドライフィルム剥離剤
クリンスルー A-29
ドライフィルムを用いたC4 bumpの形成において、一般的な剥離剤では強アルカリにより溶けてしまうSnを保護しつつ、高剥離性は維持する事により微細なSn bumpが形成可能となります。
非アミン系ドライフィルム剥離剤
クリンスルー A-19
排水負荷の大きなアミン系(窒素成分含有)を含まず、毒劇物にも非該当なドライフィルム剥離剤により、環境負荷を増大させずに剥離性能の改善が可能です。
ラインナップ