株式会社エクセディ鋳造様
福知山市はかつて様々な鉱物が産出され、古くから商工業が発達した町であり、現在でも日本有数の内陸型工業団地を有し、多くの企業が拠点を構える。1968年に創業し、産業機械鋳物部品を中心に生産してきた衣川鋳鉄株式会社は、2008年に自動車部品メーカーである株式会社エクセディの傘下へ。現在は株式会社 エクセディ鋳造(京都府福知山市)として、産業車両用のミッションケースや集合住宅の排水集合管の製造を行っている。写真は代表取締役社長・井丸万司氏(中)、取締役・本城広樹氏(右)、工場長・衣川源氏(左)
近年、海外企業との競争から国内の鋳物の生産量は減少傾向にあります。エクセディ鋳造の発泡スチロールで成形した模型を用いた消失模型鋳造法は、多品種少量生産に適し、短納期という利点を活かして日本国内の需要に応え続けてきました。しかしある時、製品不良率が悪化するという課題に直面しました。この時、花王クエーカーから紹介された製品がEGランナーでした。EGランナーは、これまでセラミック製が多かった湯道管(溶けた金属が製品部分に至るまでに通る管)を再生パルプ原料に変えたものです。通常、製造工程の変更は作業を行う社員にとって大きな負荷となりますが、EGランナーは、その加工のしやすさと、作業時の粉塵発生が低減されたことから、特にベテラン社員から好評でした。作業性の向上に加え、様々な工夫を凝らした結果、不良率を0.3%まで大幅に改善することに成功しました。
2015年から工場を拡大。 「ゼロディフェクト」を追求する「Plant0(ゼロ)」が稼働を開始しました。ここでは作業環境に配慮した様々な取り組みが行われており、「Plant0」の衣川工場長は「集塵機は、基準以上の性能を維持するよう調整し、騒音にも配慮しています。将来的にはノーマスクにしたいと考えています。コロナが収束したらマスクなしで働く社員の姿が見たいですね」と語っています。
鋳型の材料となる砂を真空ポンプにより減圧することで造型する減圧鋳造法は、バインダーを使用しないので、砂への添加物もなく、クラッシャー作業も不要なため、熱分解ガスや廃棄物を少なくできることが特長です。従来、湯道管としてシェル管を使用していた際には、シェル湯道管の残骸が残り、再生砂の粒度が不安定になることが課題でした。その対策として大きな力で集塵を行うため、砂の廃棄物が多く発生していました。「EGランナーは注湯後には炭化し、集塵機に吸われ再生砂に残らないため、砂の性状が安定しました。廃棄物の発生も大幅に減りました」と本城取締役は語ります。
再生砂の性状が安定すると通気度を一定に維持することができるため、製品 の品質が格段に向上しました。「シェル管の時には湯口の再溶解時にガスが発生し、焼着由来のノロが発生していました。エクセディ鋳造で作る製品は直接消費者から見える部分ではありませんが、実際に製品に触れるお客様にとっては、たとえ性能には変わりがなくても、見た目も美しいほうがいいですから」と本城取締役は納入先の反応なども考慮し、品質について細心の注意を払っています。
エクセディ鋳造では現在68名の社員が働いています。その中 にはベトナム人技能実習生も15名含まれており、日本の技術を学んでいます。団塊の世代と言われるベテランが退職していく中、少子化の影響は鋳造業でも決して他人事ではありません。さらに、外国からの実習生への技術伝承なども考慮すると、品質の維持、向上のためには機械化や新しい技術を積極的に導入することが必要不可欠と考えています。
花王の技術力による紙をベースとした湯道管