2019年1月22日
IoTを活用した有機自硬性鋳型管理
~ミキサー稼働状況の見える化~
花王クエーカー株式会社
髙井 康喜
1.はじめに
花王クエーカーでは鋳造現場における「安定操業、生産性/品質向上、コスト削減」に貢献できるよう、「現場稼働状況の把握・見える化」が可能となる花王モニタリングシステムを開発しましたのでご紹介致します。
2.花王モニタリングシステムとは?
花王モニタリングシステムは鋳型製造において、現場で使用されている砂混練用ミキサーの稼働状況・条件の見える化とデータ蓄積を行うことができます。
花王モニタリングシステムはIoTを活用したシステムで、鋳造会社の現場ミキサーに設置している薬剤自動供給装置(以下、コントローラと表記)に通信端末を取り付け、インターネット回線を利用してデータを専用サーバーへ送信します。
パソコンやタブレット・スマートフォンを使用し、専用サーバーへアクセスすることにより、リアルタイムにミキサーの稼働状況の閲覧を行うことができます。
また、蓄積されたデータを活用することにより、過去の造型工程での造型条件・稼働状況の解析をし、安定操業・生産性向上に繋げることができます。(図1)
3.花王モニタリングシステムで何ができるのか?
花王モニタリングシステムでは以下の内容が確認できます。
蓄積したデータを1日、月次、年次といった形で閲覧が可能であり、過去のデータを解析することもできます。例えば、不良発生時の要因解析として造型条件をトレースできます。
ミキサー稼働時にトラブル(機器故障)が発生した時には、お客様担当者や花王営業マンにメールにてアラームを発信し、トラブルを早期発見し、迅速に対応を実施することができます。
4.花王モニタリングシステムの活用事例
(1)砂温センサの早期異常発見
砂温センサ異常のアラームが発信され、センサ断線の予兆をキャッチしました。(図2)
現場トラブルが発生する前に砂温センサを交換することにより、操業停止を回避できました。
(2)薬剤吐出量の異常
造型作業を行っている際、薬剤の吐出量が目標値に対して大きく乖離したため、異常アラームが発信されました。(図3)
調査の結果、ポンプ前に取りついているストレーナにゴミ詰りが原因で、薬剤の吐出量が減少していました。
ストレーナの清掃を行うことで鋳型の硬化不良は一型のみの発生で抑えることができました。
(3)機器の予防保全
蓄積したデータの解析により、薬剤吐出量が減少している傾向が確認できました。調査を行った結、薬剤ポンプの老朽化が原因であることが判明しました。
モニタリングデータの活用により、薬剤ポンプ交換時期の予測が可能になりました。(図4)
ストレーナの清掃を行うことで鋳型の硬化不良は一型のみの発生で抑えることができました。
(4)機器のメンテナンス
モニタリングデータにより、砂温が想定よりも高温になっていることが確認されました。(図5)
冷却水のチラーのメンテナンスを行った結果砂温も安定し、安定操業を行えるようになりました。またモニタリングデータからも砂温が上昇を抑制できていることが確認できました。
今回、開発した花王モニタリングシステムは、お客様からのご意見や活用方法をご教授いただくことにより、さらに完成度の高いものに仕上げていきたいと思います。
花王モニタリングシステムを活用していただくことにより、お客様の『良き鋳物づくり』をサポートさせて頂ければ幸いです。