Global Chemicals Japan

ビスコトップ UT 開発ヒストリー

開発の背景


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トンネル施工の悩み

山地が国土の約75%を占める日本では、鉄道・道路などのインフラ整備とトンネル工事は切っても切れない関係にあります。そのトンネルの施工で幅広く用いられているのが「NATM工法」。1960年代にオーストリアで考案された工法で、固い岩盤から軟弱地盤まで、さまざまな局面で適用されています。
NATM工法は、機械で岩盤を掘削して掘り進めながら、地山の壁が崩落しないようにコンクリートで固めていく、という手順で行われます。これを「吹付けコンクリート」といい、先端にノズルが取り付けられた専用の機械で細かい粒状のコンクリートを壁に直接吹き付けていきます。
吹付けコンクリートには、なるべく早く固まるように「粉体急結剤」が混入されていますが、これはコンクリート強度の発現には効果的な一方、粉じんが飛散しやすいという難点があり、山岳トンネル工事では長年の課題となってきました。

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鈴木 憲一 | Kenichi  Suzuki
テクノケミカル研究所1室 主任研究員
トンネル用薬剤開発担当

試行錯誤を繰り返す日々

過酷なトンネル工事に従事するエッセンシャルワーカーの作業環境を、花王の技術力で改善したい。花王ケミカル事業部門では、この課題解決にコンクリートの粘弾性を制御する「ビスコトップ」の技術を活用できるのでは…と考え、新たな増粘剤の研究開発に取り組みました。
しかし、何度実験しても期待とは逆に粉じん量が多く発生してしまう結果に。さらに、吹付試験機がないことから、現場の現象を試験室で再現することが難しく、評価方法も見つけることができない。なかなか成果を上げられないまま、悶々とする日が続きました。
そんな中、何気なくコンクリートの塊を壁にぶつけていた私は、添加する材料によって明らかにコンクリートの飛散状態が異なることに気づきました。「そうだ、この方法で評価できるかも!」

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視点を転換し、現場の現象を試験室で再現。ついに、高いレベルで粘弾性と急結性を両立させ、コンクリートの飛散が大幅に少なくなる材料を発見できたのです。この結果は、実機を使用した再現実験でも確認、商品化にこぎつけることができました。

「防じんマスクが無くても作業ができるくらいだ」

ビスコトップ UTを初めて導入した現場の作業員の方は、いつもと違う手順となることに躊躇する向きもありました。しかし、使用してみると実際に粉じんが少ないことを確認、「防じんマスクが無くても作業ができるくらいだ!」と効果を実感していただけました。この方は、次の現場でも「ビスコトップをこの現場でも使いたい」と元請けであるゼネコンに提案。採用されたと聞いた時は、開発時の苦労を忘れるほど嬉しかったのを覚えています。
 
さまざまな試行錯誤の末に誕生した「ビスコトップ UT」は、山岳トンネル工事の長年の課題であった粉じんに起因するじん肺を少しでも減らしたい、という思いが実を結んだ結果です。これからも工事に携わるすべての人の命を守るため、次なる進化をめざして提案し続けていきたいと思います。

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