Global Chemicals Japan

ニュートラック 5000 開発ヒストリー

開発の背景


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アスファルト改質剤研究のはじまり

これまで花王は、自社の界面科学技術を活かしてコンクリートの作業性を高める製品を販売してきました。
そこへ、道路施工会社からのリクエストで「アスファルトにコンクリートの強度を持たせてほしい」という要望が舞い込みました。「アスファルトの耐久性が高まれば、道路工事の頻度を抑え、交通渋滞緩和やCO₂削減にもつながるはず…」と考え、社会と環境への貢献を大きな目標に掲げて研究に着手しましたが、あらゆる環境に耐えられる材料の開発は難航しました。

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秋野 雄亮 | Yusuke Akino
テクノケミカル研究所1室チームリーダー
ニュートラックの構造設計を担当。

ヒントはスペインから

そんななか、先行してアスファルト舗装の研究を行っていたスペインのグループ会社から、新たな発見がもたらされます。それは、コピー機などのトナー製造に用いられる「熱可塑性樹脂」が、舗装の耐久性向上に有効であるという実験結果でした。これを受け、本格的にアスファルト改質剤の研究を始めていた日本の研究チームでも熱可塑性樹脂に関する解析、最適な分子量やポリマー骨格の設計といった研究開発を進めていきました。

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試行錯誤を乗り越えて

しかし、できあがった試作品の改質剤を舗装に添加してみると、硬くて作業性が悪い、冷えたあとにひび割れが発生するなど、ラボで想定した成果は出ませんでした。課題解決のため、ひたすら分子量やポリマー骨格を調整しながら何度も実験を繰り返す日々が続きました。
そして2018年、試行錯誤の末、ポリエステルを利用した初のアスファルト改質剤「ニュートラック 2500」が完成しました。アスファルトと骨材の親和性を高めることで、通常の舗装の約5倍の耐久性を実現したのです。

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廃PETを有効利用、環境配慮への挑戦

社会からの要求に応じ、当社の経営方針は「社会のサステナビリティへの貢献」へと転換。既存の製品を環境配慮型に切り替えていく機運が高まっていました。議論を重ねるなかで浮上したのが、廃棄されるPETを原料の一部として用いるという発想でした。花王には、PETを活用したポリエステルの生産工程短縮に関する20年来の知見があり、これを応用すれば社会問題となっている廃PET削減に寄与することができるかも知れないと考えました。

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高い性能と環境保全を両立、「ニュートラック 5000」の誕生

単純に廃PETを組み込むだけではニュートラック本来の耐久性が発揮されず、また製品化の際には廃PETに含まれる不純物混入の許容値が不明確といった問題も浮き彫りとなりました。
そのため、最大量の廃PETを活用しながらも最大限の特性が得られるポリマー骨格設計を試行し、性能評価を繰り返すことで、廃PET導入・不純物許容の最適量を導き出しました。こうして2年の歳月をかけ、「ニュートラック 2500」の性能を保ったまま廃PETを原料とする「ニュートラック 5000」が完成したのです。

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「花王の製品開発が、お客様の喜びにつながり、さらにそれが社会のために役立つ」
その思いのもと、われわれ研究者も頻繁に実験現場に出向き、お客様とともに議論したからこそ生まれた製品。それが「ニュートラック 5000」です。 

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